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2025年6月19日 : ハジメあればオワリあり
 「磯貝さん、自然食品店を経営してみない?」と声をかけられたのが、1999年の暮れだった。ノストラダムスの大予言が外れて、ホッとしていた時だった。
 1996年に大森英桜に弟子入りしてから、大森が会長をしていた宇宙法則研究会(宇宙研)で働いていた。当時はまだ、宇宙研は法人化しておらず、任意の団体だった。私は大学(夜学)を卒業して出版社で仕事をしながら、宇宙研ではボランティアとして働いていた。そんな中、宇宙研の委員だった石田英湾と話している中で、出版社を辞めて宇宙研で本格的に働くことになった。その際に、宇宙研も法人化しようという話しになり、利益追求をしない、お金のかからない法人化ということで、合資会社という形になった。
 宇宙研の法人化と一緒に、「こくさいや」を運営することになった。「こくさいや」は「ななくさ」という自然食品店を譲り受けて始まった。宇宙研の普及活動で全国の自然食品店を私が歩いて回っている時、練馬の「ななくさ」に寄り、「ななくさ」を経営していた橋本政憲さん夫妻と知り合いになった。橋本夫妻は「ななくさ」を経営して6年、そろそろ一線から退き、田舎に引っ越しをしようと考えていた。
 「ななくさ」は元々、松田のマヨネーズを作った松田さんが1980年頃に作った自然食品店だった。松田さんは自然食品店の草分け「天味」での仕事を経て、独立した。「ななくさ」で扱っていた有精卵で手作りマヨネーズを作って販売したところ、それが大好評になり、埼玉の神川町に移住しマヨネーズ工場を作った。今は松田さんの娘さん夫妻が経営を引き継ぎ、松田のマヨネーズ(ななくさの郷)を作っている。
 松田さんが埼玉に引っ越す際に、橋本さん夫妻が「ななくさ」の経営を引き継いだ。橋本政憲さんは「ななくさ」を経営する前、日本CI協会の事務局長をしていた。当時の雑誌「新しき世界へ」の編集長も兼務していた。橋本さんのCIでの功績は大きく、書籍も何冊か出版されている。月刊誌「新しき世界へ」も面白く、会員数は橋本さんが編集長をしていた時が一番多かったようだ。石塚左玄から始まる食養の系譜をまとめたのも橋本さんだった。大森先生の代名詞にもなった「半断食」も、「半断食」と名付けたのは実は橋本政憲さんだった。
 橋本さんから「ななくさ」を引継ぎ、「こくさいや」に改名してマクロビオティックの専門店として店をはじめたのが2000年9月だった。動物性食品、砂糖類(黒砂糖や甜菜糖も)は一切なし、松田さんには申し訳なかったがマヨネーズも扱わなかった。その代わり、野菜は自然農法にこだわり、食材は世界一のものをそろえた。そして、大森先生から学んだ食養指導を店の柱にした。
 今思えば、本当に理念先行の店だった。最初の月の売り上げは最悪だった。開店セールをしたにも関わらず50万円ほどだった。最初の開店セール3日間はそれなりにお客さんは来てくれたが、その後は、本当に閑古鳥が鳴いていた。それでも、開店セールに来ていただいたお客さんには感謝感激だった。その時に来ていただいたお客さんで今もこくさいやで買い物をしてくれている方がいるから本当に言葉にあらわせないくらい感謝している。そういったお客さんに支えられてきた。
 開店後、なかなか黒字にならなかった。一年間やってみて赤字が数百万になっていた。宇宙研で経営をしていたが、大森先生ご夫妻には迷惑かけられなかったので、私の会社員時代に貯めていた200万と石田先生に借りた200万を元手に「こくさいや」を始めたが、その資金も底をつきそうだった。そんな時、雑誌オレンジページの取材が舞い込んだ。「玄米がおいしい」オレンジページの別冊ムックで「こくさいや」を紹介してくれた。
 「玄米がおいしい」が発売されるやいなや、問い合わせが相次いだ。1年で2000件近い方々からカタログを送ってほしいという連絡があった。石の上にも三年、といわれるが、2年目の後半には赤字もなくなり、3年目には黒字化することができた。本当に運がよかった。(つづく)
2025年5月27日 : マクロビオティックと即効性
 アトピーのある人がステロイドを使うと症状がすぐにおさまることはよくある。痛みや痒みを抑えることは西洋医学では得意である。西洋医学で使われる薬の多くが即効性のあるものが多い。頭痛、腹痛、不眠、痒みなど、即効的に症状をおさめるのが西洋薬の特徴のひとつである。
 一方で東洋医学の薬は、即効性よりもジワジワと効いてくる遅効性を特徴としている。一般的に、即効性のある西洋薬(化学薬品)は副作用が強く、遅効性を特徴とする漢方薬(生薬など)の副作用は弱いといわれる。化学薬品は症状を抑えるのに対して、漢方薬はじっくりと体質を改善する方向に導く(方向性が間違っていなければ)。
 では、マクロビオティックの治療的側面において、症状に対してどのような対処法があるのか。
 発熱や頭痛には第一大根湯やシイタケスープ、腹痛には梅生番茶やくず湯、そして生姜シップ、これらは食養の手当て法ではオーソドックスである。この効果は、驚くほど速い。頭が割れるように痛かった人が、シイタケスープをガブガブ飲んだら、すぐに痛みが消えたということも珍しくない。強烈な腹痛でも、お腹に生姜シップを2時間位じっくり行ったら痛みがウソのように無くなったということもよくある。食養の手当ては、症状の根本原因にアプローチする。そして、その根本原因が少しでも減れば、症状は改善する。
 そして、その根本原因を造る私たちの体を徹底的に改善すれば、本当に治療に導くことができる。私たちの体質を造るもので、私たちが改善できるものは、まずは食である。私たちの細胞は食べものからできている。食べものが変われば細胞も変わり、体も変わる。しかし、数日や数か月で変わるものではないから、数年かかり、体質改善においては決して即効性があるとはいえない。ただ、着実に食が変わると体が変わる。
 マクロビオティックにおける根本的かつ即効的治療法に断食がある。一時的に食を断つことで私たちの体は劇的に変わる。
 桜沢如一はヨーロッパで断食(七号食)の実際の効果を報告している。「奇跡の10日間」という断食(七号食)の効果である。ヨーロッパ各地から集まった人たちとの断食(七号食)合宿で、たった10日間の合宿にかかわらず多くの病気が改善したという。リウマチ、心臓病、糖尿病などがたった10日間で劇的に改善したというのだ。
 大森英桜も「あらゆる病気を10日で治す」と言って、難病者を10日間で改善した話しを時々語っていた。実際に私も、10日間で症状が劇的に改善した人を、大森の付き人をしている時に、直接お会いして話しを聞いたことがある。
 その後、私も和道をはじめて食養合宿(断食合宿)を開催してみて、短期間(3~6日間)で症状が改善した人たちを数多くみている。脊柱管狭窄症で歩くことがままならなかった人が普通に歩けるようになったこともある。腎不全でお小水がほとんど出なくなった人が腎臓の働きが戻りお小水が出るようになった人もいる。ここ最近では、コロナワクチンの副作用で髄膜炎になった人が、痛みとこわばり、難聴がたった数日の断食と手当てで消えたこともある。本人は喜び、一緒に合宿に参加した人たちは驚きを隠せないでいた。
 マクロビオティックにおける即効性は、断食と食養手当てによってもたらされていることを、私はこの十数年の活動で確信している。そこには、症状の陰陽を把握することがまずは必要である。その上で、体の陰陽に合った断食と食養手当て、そして回復食が重要である。その間、体を動かし、深い呼吸をして、食養手当て法で体を芯から温めること。それを安心した状態で取り組むことである。これらが組み合わされば、いわゆる奇跡が起こることは必然である。
 病というものは私たちの体を治す働きとして出ている。その治す働きを邪魔せず、自然に沿ってあげるだけでいい。
2025年5月8日 : 白髪を防ぐ食養生
 「若白髪は金持ちになる」と昔からよくいわれていた。私は小学校に上がって間もない頃、クラスの仲間から髪の毛に白いのがいっぱいあるとよく笑われていたから、この言葉が本当だったらいいな、と子ども心に思っていた。今のところ、この言葉はハズれているけれど、陰陽でみるとオモシロイことがわかる。

 今年(令和7年)1月30日の新聞(産経新聞)に「白髪防ぐ植物成分発見か」という見出しで興味深い記事があった。以下全文を紹介する。
 植物に含まれるポリフェノールの一種、ルテオリンに白髪を防ぐ効果があることを動物実験で確かめたと、名古屋大のチームが発表した。塗っても飲んでも効果があったとし、人間での応用が期待されるという。チームが開発した、加齢で白髪が生じるマウスの背中にルテオリンを約4カ月間塗布すると、塗らなかったマウスと比べて白髪の割合が大幅に減った。飲ませても白髪の減少が確認された。毛髪の成長を支える細胞や、毛髪の黒色を維持する細胞の機能が保たれていたことも、このマウスを使った実験で確認した。(以上、記事全文)

 ルテオリン、はじめて聞く名前だった。調べてみると、身近な食物にルテオリンは入っているという。ブロッコリー、セロリ、ピーマン、レタス、エゴマなどにルテオリンが沢山含まれているという。エゴマ以外はどれも陰性な野菜で、昔からの白髪対策の食養の食材にも通じている。白髪の食養生には昔から、山椒、海藻、黒砂糖がよく使われていた。昆布を黒砂糖と山椒で味付けして佃煮にしたりしていた。外用の手当てには生姜油(ごま油と生姜汁を混ぜたもの)のすり込み、首や頭への生姜シップ(20~30分)もよく活用した。
 白髪の原因は頭皮の血行不良からだといわれる。頭皮が硬くなって血行不良になっているのであれば、白髪も当然、陽性の症状といえる。この硬くなった頭皮をゆるめるのに、ブロッコリーやセロリ、ピーマンなどの陰性な野菜が効果的なのもうなずける。
 山椒の白髪予防の効果は少し前から科学的にもいわれるようになっていた。戦前までの日本人は、動物食はとても少なかったが、魚を多食する人たちはある一定数いた。そんな人たちにも白髪の多い人がいて、白髪予防に魚の毒消しになるものが食養に多かったのではないかと思う。ウナギには山椒だが、その理屈からも白髪に山椒といえる。さらに山椒も抗酸化力がとても高い。生姜の血行促進効果は言うまでもない。
 そして何よりも、白髪予防には体の酸化を促進させないことである。老化促進物質として有名なリン酸塩は、世に出回る「うま味調味料」と「動物性食品」に大量に含まれている。これらのリン酸塩は中毒性があって、食べ始めるとなかなか止めることができない。白髪も老化の一つであるが、老化を促進する食べ物に中毒性があるというのは何とも皮肉なことである。
 しかし、体の酸化を防ぎ、老化防止に役立つ生活習慣は、実際に行ってみると清々しくて爽快である。ホルモンを活性化させて、生きていることへの感謝や素晴らしさを味わうことができる。中毒による一時的な快感よりも、習慣による永続的な充実感の方がずっと心地よい。
 「若白髪は金持ちになる」、昔の人たちは、白髪が陽性であることを経験的・感覚的にわかっていたのかもしれない。ほどほどの陽性であれば、よく働き、頭もキレて、財も蓄える。私は幼少期に小魚の煮干しをよく食べて白髪になったのだが、その古塩を抜くことを研究し実践してきた。そのお陰で、少しは古塩が抜け出してきたのか、白髪も減ってきた。ただ、その副作用で金持ちになれなかったのかもしれない。
2025年4月1日 : 男と女の和合の道・その2
 「死ぬ時節には死ぬがよく候」良寛和尚の有名な言葉である。良寛さんが71才の時、越後を襲った大地震で多くの人々が亡くなった。その時に、良寛さんが友人に宛てた手紙の中の一節である。「しかし災難に遭ふ時節には災難に遭ふがよく候、死ぬ時節には死ぬがよく候、是はこれ災難をのがるる妙法にて候 かしこ 良寛」
 災難にも目を背けず、あるがままを受け入れて、今できることを精一杯行う、それ以外にないではないか、というのが良寛さんなのだろう。
 曹洞宗の開祖・道元禅師もあるがままを受け入れる大切さをある逸話で残している。病にかかった幼子を抱えた母がいた。母は何とか子どもを助けたいといろいろな医者に行くが、どの医者も打つ手がないという。そんな母に道元は、「病人が一切出たことのない家の井戸の水を飲ませなさい」という。母は必死になって病人が出たことのない家を探すが、そんな家はどこにもなかった。そして、幼子は残念ながら亡くなってしまう。道元禅師もまた良寛さんと同じように、死ななくてはならないときはそれを受け入れなくてはならない、といっているのかもしれない。一方で、本当に病人が出たことのない家の井戸は、磁場が良く、水のエネルギーが高く、どんな病気も癒す力があると道元禅師は知っていたのかもしれない。しかし、そんな井戸は滅多になく、なかなか探すことができなかったのかもしれない。
 現代社会の少子化も、あるがままを受け入れているだけでいいのだろうか。物事には必ず、原因と結果がある。そして、自然現象と人工現象があるのも現代の特徴である。
 私は、現代の少子化は多くの場合、人工的な問題だと考えている。地震などの自然災害とはまったく別物なのだ。
 少子化の前提に未婚社会があるというけれど、男が女を求める力、女が男を求める力が低下しているのだと思う。男はある年齢になったら女性のことで頭がいっぱいになり、女はある年齢になったら男性のことで頭がいっぱいになるのが自然である。それが男女ともに、だいたい中高生の頃であるのが自然であるのだが、ちょうどその頃になると受験勉強が本格化する。勉強というものは本来、心身ともに元氣になるようなものでなければならない。それが現代教育の勉強は知識だけ増えて、けっして健康になるようなものではない。これは日本だけでなく、東アジアの中国、韓国ともにそうである。日本、中国、韓国ともに、少子化の問題が深刻である。国家ということを考えても、国家の中枢で仕事をする人たちの生命力が弱かったら、列強諸国に伍していくことはできない。数多くの健康相談をしていると、高学歴の女性に子どもが少ないことが多いが、これも現代教育の根本的な間違いではないかと思う。
 桜沢如一は25才までは徹底した体づくりが大切だといった。伝統的な食事、それも一汁一菜から三菜の素食でいい。家の中や外を徹底的に掃除する力を身につけて、自分で自分の食べ物を作る。そして、調理する。これを昔から修身といって、自分のことは自分でする、ということを身につける。この修身は、実は自然な食をしていなければ、できることではない。
 「男は男らしく、女は女らしく」ということを言ってはならない、という雰囲気があるが、これも大きな問題である。自然な食をしていたら、男は男らしくなり、女は女らしくなるのが、生物の本性である。
 私は少子化の原因として、食の劣悪化、飽食(高カロリー、高たんぱく、白砂糖と人工甘味料)、化学物質の氾濫(農薬、化学肥料、合成洗剤、住宅、車、ワクチンなど)、電磁波の氾濫(スマホ、ゲーム、PCなど)、運動不足、危機感の喪失、偏った学校教育などではないかと考えている。世界でも飢餓状態が高いアフリカでは、出生率が高いという統計がある。命の危機感が強いほど、本能的に子孫を残さなければならないという生命力が湧いてくる。
 和道をはじめて11年になるが、その間、妊活で断食に参加される人たちも多かった。私の感覚的なところになるが、断食の妊活成功率は限りなく100%に近い。1度の断食で妊娠した人もいる。断食は体の大掃除であるから、溜まった毒素のデトックスになり、かつ危機感が生命力を刺激するのかもしれない。断食で体を整え、伝統的な自然な食を日々の食生活としたら、男は男らしくなり、女は女らしくなる。私はこれを少子化問題の解決法だと信じている。
2025年3月13日 : 男と女の和合の道
 「磯貝君、これからの世の中で一番難しいことは、男と女が真に結ばれることだよ」大森英桜に師事して間もない時に言われたひと言である。20代の生意気な私は、「先生、この世はいつまでも陰陽だから、陰には陽、陽には陰、男女のそれも陰陽で乗り切れると思います!」と、今思えば恥ずかしくも、豪語していた。
 日本人の出生数が下がる一方である。少子化の波は大波で、特に地方では集落の死活問題になっている。和道のある群馬・富岡市でも小中学校の統廃合が今年から実施される。隣の町では一年に一人の子も生まれなかったという地域がある。大森が言うように、男と女が実際に結ばれていない時代に私たちはもうすでに突入していた。
 米国のトランプ大統領が就任式で「米国には男と女しかいない」と言ったようだ。当たり前のことである。この世には男と女しかいない。もちろん、同性が好きな男女は昔から一定数いるが、それでもその人たちも「男か女」である。ジェンダーフリーなどといって、男女の違いを曖昧にすることは、自然界から見ると滑稽である。もちろん、社会的には男女は同権であり、社会的な違いがあってはならない。しかし、生理的、生物的には違いがあり、その違いは尊重されないとならない。
 妻の実家は会津の山奥である。15年ほど前、妻の祖母が亡くなった時、会津地方の伝統的な葬儀に驚いた。忌明けの食事が男女別であった。食べる場所も違う。男の席には魚があるが、女の席には魚がなく、野菜ばかりである。男と女で明白に分けている。男女の陰陽を明らかにしていることの証ではないかと思う。マクロビオティックの陰陽でみたら、素晴らしいことだと思う。会津の豪雪地帯では、男は男、女は女、陰陽が明白になっていなければ生きてこられなかったのではないかと思う。
 大森の言う「難しい男女の結び合い」というのは、何千年と続く男女の陰陽観が崩壊したことを言っていたのである。大森は私の生意気な言葉を、ニコニコして聞いていた。一方の私は、今思うと、大森の言葉は当たっていたと、素直に思える。
 「一姫二太郎」子どもを授かるならば、一番目に女児、二番目に男児が理想的だという諺である。女の子の方が体が強く、病気にも罹りにくい。実際、乳幼児死亡率は統計開始以来、女児の方が少なく、男児の方が高い。新米ママには生命力のある女の子の方が育てやすいというわけだ。子育てに慣れたところで男児を産んだ方が、男の子が育ちやすく、さらに上の女の子が下の男の子を面倒みてくれる。小さいママ(ホントのチーママ)が一番目の女児というわけだ。
 私たちのダレひとりとして例外なく、父と母の精子と卵子が結ばれた受精卵を命の元としている。そして、母のお腹の中で十月十日育まれ、この世に誕生している。母のお腹の中での初期のころは男女の違いはないという。むしろ、元々、私たちはすべて、女であったようだ。その女である生命が、陰陽の働きによって、男は男になり、女は女にとどまったようなのだ。陰性は遠心力が強く、陽性は求心力が強い。陰陽の物理である。母のお腹の中で、初期の頃、遠心力という陰性なエネルギーを浴びて生殖器が体の外に飛び出したのが男児である。一方、女児は求心力という陽性なエネルギーが勝ったので、生殖器が体の中に留まり、女児となった。
 赤子においては男が陰性で女が陽性ではないかと私は考えている。そして、それがゆえに、陰は陽を求め、陽は陰を求めるように、男は陽性を欲し、女は陰性を欲する。わが家の子育てでも、子どもへの食養指導でも、多くの場合、男児の方が陽性な食を欲することがとても多い。女の子がおいしく食べているみそ汁を、男の子は薄いと言って、味噌や醤油を足すことはしばしばである。さらに、男の子は動物性を欲することが多く、穀菜食の家の子でも、男の子は菜食では満足しない子も少なくない。食養の家庭で女の子は素直に育っている子は多いが、男の子では菜食に反発する子も少なくない。陰陽でみたら、よくわかる。
 陰性な男児は陽性を求めて陽性な男になり、陽性な女児は陰性を求めて陰性な女になる。食養ではこの陰陽を理想としている。しかし、現代はこの陰陽がバラバラ、または極陰極陽という不調和になっていることがとても多い。大森が「現代で男女が真に結ばれることこそ難しい」というのは、この陰陽の乱れを言っていたのだ。(つづく)