マクロビオティックとは

マクロビオティックとは
 桜沢如一(1893-1966)が石塚左玄(1851-1909)の食養法をベースに発展させた陰陽無双原理を応用した思想哲学と生活法(真生活法)をマクロビオティックという。
 石塚左玄の提唱した食養法の骨子は身土不二、一物全体、陰陽夫婦アルカリ論に集約される。また、人類は穀食動物であるとし、穀物を主食することを強く説いた。食育という言葉も概念も石塚左玄が最初に提唱している。
 桜沢如一は石塚左玄が主宰し遺した食養会(1907-1940)に入会し、1938~40年には会長を務める。その後、石塚左玄の食養法を発展させた食生活法を、フランスをはじめ海外で普及するに当たり、18世紀ドイツでクリストフ・ヴィルヘルム・フーフェラントが使いはじめたマクロビオティック(長寿法)を当てて海外に紹介した。語源は古代ギリシャ語「マクロビオス」であり、食養法をベースに陰陽無双原理を応用した真生活法がマクロビオティックとした。
 1941年以降、桜沢如一は反戦平和運動に力を注ぐようになる。禾本科植物の代表である稲(イネ)を口にすることは平和につながるという信のもと、マクロビオティック運動は世界平和運動に繋がっていった。
 世界平和は一人ひとりの口からはじまり、個人の健康と世界の平和は繋がっているものだという桜沢の考えは、世界各国の人々に支持されている。
 そういう点において、マクロビオティックは特定の食事法を指すのではないが、一人ひとりが真剣に健康と平和と自由を希求し、身土不二と一物全体、陰陽調和の食生活を永年実践すると自然と玄米菜食(正食)に行き着く。


日本でのマクロビオティック
 桜沢如一の高弟である大森英桜(1919-2005)は1960年代より日本CI協会(桜沢如一の遺したマクロビオティック普及団体)を拠点に日本全国でマクロビオティックを普及した。
 大森英桜は1948年、桜沢如一の著書『新食養療法』『宇宙の秩序』に出会う。元々病弱であった大森は桜沢の本をもとに正食(マクロビオティック)を開始し、みるみる健康を回復する。
 大森は自身だけでなく、縁のある人々へ正食を説いて回り、特に病人への指導に力を入れた。桜沢は『新食養療法』を片手に次から次へと病人指導をする大森の出現に喜び、当時の桜沢主宰団体(MI)の機関誌で大森のことを称賛している。
 1953年、大森は桜沢に動物性食品一切(肉卵乳製品魚介類)を摂らない食事法を提案し、桜沢からも認められた。
 1956年、大森は一慧夫人と結婚し、4男2女を授かる。一慧夫人と二人三脚で病人への正食指導、子育てを通して、日本人に合った正食法を深化させる。
 大森は陰陽無双原理を応用し五つの体質論を確立させる。陰性体質の中にも肥大型と委縮型があり、陽性体質の中にも肥大型と委縮型があるとし四つの体質を提唱。そして、陰陽に大きくかたよらない中庸体質を加えた五体質論を提唱した。そして、日本人には、子育ても含めて、一切の動物性食品は必要ないという結論に達した。


和道がすすめるマクロビオティックとは
 桜沢、大森の理論と実践を元に、現代の人々の体質と体調に合わせた食事と手当て、生活法をすすめている。
 私は1996年から2005年まで大森英桜に師事し学んだマクロビオティックを生活法に高めて普及している。生活法は小田原で生活寄宿塾を主宰する和田重宏から学び、マクロビオティックの理論と実践を融合させたマクロビオティック生活法を提唱している。
 和道のすすめるマクロビオティックは大森の提唱した五体質論を元に、それぞれの体質体調に合った穀菜食を柔軟的に実践することにある。五体質論を元にしながら、日々の生活で感性を高め、体調や気候に応じて食事と生活をすることが大事である。
 食事だけでなく、手当て法、運動法、呼吸法、掃除法など生活そのものがマクロビオティックでは重要になる。生活は私たちを磨くものである。心身ともに生き生きとしてくるものがマクロビオティック生活である。


マクロビオティックの陰陽論
 桜沢如一は陰性を拡散性、陽性を求心性としてとらえる陰陽論を確立した。食物や人間の活動、自然界の現象においても陰陽で観る目、陰陽で感じる感覚を養うことがマクロビオティック生活である。
 植物において、地上に伸びる葉のものは大地から拡散性のちからが強く根のものに対しては陰性であり、逆に根のものは地下に向かう求心性のちからがつよく葉のものに対して陽性である。また、人間の呼吸においては、吐く息は拡散性の力が強く陰性であり、吸う息は求心性の力が強く陽性である。吐く息を優位にしていると血圧は下がり、脈もゆっくりとなることから、からだは拡散性の力により陰性になることがわかる。一方で吸う息を優位にすると血圧は上がり、脈も速くなることから、からだは求心性の力により陽性になることがわかる。
 しかし、陰陽は互いに補い合っており、陰陽が単独で存在することはない。植物の葉と根は陰陽の対であり、人間の呼吸も吐いて吸う陰陽の対の行動があって成り立つものである。その中で、わたしたちの心身が陰性優位の状態であるのか、陽性優位の状態であるのか、その判断する力を柔軟的に高めていくことが大事である。
 マクロビオティックとは「命を大きく観る」ことにある。


マクロビオティック食事法の要点
1. 自然農法、自然栽培の食材を基本とする
2. 穀物、野菜、海藻、天然醸造の調味料(みそ、しょうゆ等)、漬物など伝統的な発酵食品、伝統製法の海塩を基本食材とする
3. 果物、生野菜などは体質に応じて使用する(現代は多用した方がよい人が多くなっている)
4. 肉、卵、乳製品、魚介類などの動物性食品は原則的には必要ない(例外もある)
5. 人工的・化学的加工の少ない食材を使用する(精製の度合いの少ない食材を使う)
6. 自分の居住地から極端に離れた場所でとれる食材は控える→国内産の食材使用が原則(身土不二)
7. なるべく一物全体(食材のすべてを捨てることなく活用する)を心がける


マクロビオティック生活法の要点
1. からだを動かしてよく働く(よく歩く)
2. 日々そうじをする
3. 深い呼吸をする
4. 腰を立ててよい姿勢を心がける(正坐)
5. 質のよい睡眠をとる(横になったらすぐに眠り、朝はパッと起きて機嫌が良い)
6. 旺盛な食欲がある
7. ダレにでも幸福をプレゼントする(笑顔のプレゼント)


マクロビオティックを実践するにあたっての現代の人たちへのアドバイス
 今の日本は、戦前に比べ動物性食品の摂取量が格段に増加しました。欧米化した食生活で心身を造ってきた世代の人たちが大半になっています。
 動物性食品には消化を助ける野菜や果物、あるいは香辛料を伝統的に付け合せています。わたしたちの身体は胎児期から幼少期にかけて基礎が培われます。心身の基礎ができる時から動物性食品を摂ってきた人たちは、マクロビオティックの食事に入られても、はじめから野菜や果物、香辛料を体質体調に合わせて組み入れていった方がよいです。
 主食に関しては、玄米を中心に分搗き米、めん類、時には天然酵母のパンも含めて、柔軟的に取り入れてください。お米に関しても鍋類(圧力鍋、土鍋、金属鍋)や炊き方も柔軟的に変化させることもポイントです。
 塩気に関しては、基本的には「おいしい」と感じる塩気でよいです。ただ、時に塩気を抜いた食事にしたり、時にはしっかり味付けのある食事にしたりと塩気に関しても陰陽柔軟的に変化せてください。
 また、月に一度ほど一食断つ、二食断つなど簡単な半断食を組み入れるなどの食生活の工夫は、体質を入れ替えるにはよいものです。
 具体的なアドバイスが欲しい方は、望診・食養相談を利用ください。

文責・磯貝昌寛