商いは飽きない

 「商いは飽きない」と云われます。商売をしていくうえで、売り手も買い手も飽きてしまうような商売をしていたら、その商売は続かない、ということを端的に言い表しています。しかし、この言葉は商売だけでなく、あらゆることに通じています。「商い」を仕事や夫婦に置き換えてもいいでしょう。勉強や部活、家事や育児、人が継続的に行っていくことであれば何でも置き換えることができます。
 人が継続的に行っていくことに「飽き」が来ることは必然と言えます。飽きは秋に通じます。秋の後は必ず冬が来ます。商売に飽きが来れば、次に来るのは冬の時代。商売は振るわず、冬の寒さで閉店を余儀なくされることも珍しくありません。冬の寒さを耐え忍んで何とか冬を乗り切れば、次には春が来ますから、商売も春の勢いに乗って成長していけます。
 飽きは秋であると捉えるだけで、人生は大きく違ってきます。春夏秋冬に終わりはありません。すべては巡りです。
 飽き(秋)の後には冬が来ますが、冬を乗り切れば春です。冬を乗り切る体力と気力を充実しておくことが、商売でも夫婦関係でも、勉強や部活動でも、あらゆることにおいて大事なことです。もし仮に冬を乗り切る体力と気力が無かったらどうするか? 冬を乗り切る体力と気力を冬の間につけるしかありません。大変なことであるのだけど、それしかありません。冬を乗り切る体力と気力は生命力そのものです。私はその生命力をつけるのに最も有効的なことが断食だとおもっています。正確には生命力を高める「はじめ」に断食があります。人によれば断食をしただけで生命力が高まる人もいますが、そうでない人もいます。そうでない人も断食をして腸をキレイにすると食べ物の生命力を吸収する力が最大限高まりますから、結果として断食が生命力を高める「はじめ」になるのです。
 よく考えれば、リスもクマもヘビも、冬は多くの動物が断食をしています。冬眠と称する断食で生命力を高めています。
 人間社会でも飽きが来ないよういろいろと工夫をしています。学校では小学校、中学校、高校と区切りをつけて、卒業式や入学式で心機一転、新たな門出を演出しています。入社式や研修もその一つです。結婚式や銀婚式も夫婦の門出になっているでしょう。もちろんそれらも十分吟味された素晴らしい行事ではあるのですが、それ以上に、飽きを解消するのは断食が一番です。
 自然界に目を向ければ断食は特別なことでなく、ごく自然なことであるのです。自然界の動物の仕切り直しと門出に断食があります。それは時に病気であったりもします。ですから、病というものは人生の「飽き」と言えるのです。
 断食そのものが改善になる人と、改善のはじめになる人、それぞれですが、飽きを打破するもっとも大きな一歩に断食があります。