汗腺を開く

 アレルギーやアトピーのある人は汗のかき方が弱い、と思う。体に数万個あるといわれる汗腺の開きが弱いようだ。ある調査では日本人の汗腺は250万個もあるという。普通の人でも普段活性化している汗腺は150万個程度で、さらにアレルギーのある人は100万個程度しか働いていないという。私もアレルギーの人たちを数多く診てきて本当にそう実感する。汗腺は、体の中から外へと、毒素を運び出す最終出口である。その最終出口が塞がれている状態がアレルギー症状であるともいえる。
 余談であるが、ロシアやスウェーデンなど寒い地域の人々の汗腺は200万弱であり、インドやマレーシアなど赤道近くの暑い地域の人々は400万以上の汗腺を持っているという。これは、寒い陰性な地では、体に熱をこめる必要があるために、汗腺を少なくして熱の発散を控える。一方、暑い陽性な地では、体から熱を放散する必要があるから、汗腺を多くして放熱する。アレルギーやアトピーは、動物性食品の過剰が基本にある。肉食は、温暖多湿な日本の風土に合わず、体を陽性化して汗腺を塞いでしまう。
 塞がれた汗腺を開かせるのが、本当の生活だと思う。生活は生きた活動であるから、汗腺も活性化する。
 アレルギーのある人で汗をかくと「気持ち悪くてたまらない」という人が多い。これは汗をかききっていないから、毒素の排出が中途半端で、体に毒素が停滞しているのだと思う。肌に症状が出ていない人でも、中途半端に汗をかいた時は気持ちよいものではない。汗をかききったときに本当の爽快感がある。
 「うちの子は汗をほとんどかかないので気になっている」という相談が現代の小さい子を持つ母親から多い。また、「汗はあまりかかないのだけど、汗疹(あせも)はよく出る」という相談も多い。
 汗疹(あせも)は、本当にすばらしいもので、汗腺のつまりを開かせようとする自然な反応である。汗疹だけでなく、アトピーや湿疹も、肌の多くの症状は体に蓄積した毒素を排出しようとする自然な反応である。
 汗腺のつまりを開かせようとするには、詰まった箇所へ血液を集めなくてはならない。血液が細胞や組織をきれいに掃除してくれる。汗疹や湿疹で肌がかゆくなれば、それ自体でも血液がその部分に集中する。さらに、痒ければ痒い部分を掻く。その掻くという行為そのものが自然治癒力でもある。掻けばそこには血液が集中する。ちょっとした痒みの時に、ちょっと掻けば痒みが収まるのは、掻いて痒い患部に血液を集めて、その血液が痒みの毒素を処理したからなのだ。さらにアトピーなどで痒みがひどければ、掻き毟(むし)ることにより出血することもある。出血すれば、痒みを引き起こしている毒素を持った血液が排出されるだけでなく、きれいな血液が患部により集まってくることにもなる。痒みの強弱に関わらず、掻くことはそれ自体が自然治癒力である。
 突発性発疹や蕁麻疹(じんましん)なども汗腺を開かせてくれる有り難い反応である。こういう発疹の後は、体の中から外へと向かう、毒素を処理する汗腺という“道”が広く、そしてたくさん増えている。アレルギーやアトピーのある人が、全身から汗を大いにかけるようになると、もう治ったといっていい。東洋では“道”という言葉が尊ばれるが、体の中にもさまざまな道があるということを食養は教えてくれる。

あせもと難病

 10年以上前、東京に住んでいる頃です。家で一人でいるとき、みそ汁が急に食べたくなり、冷蔵庫で具材を探していました。そこにエンサイらしき葉物があったのですが、随分と水分が飛んで硬くなっていました。妻が冷蔵庫に入れっぱなしにしたなあ、と思い、もったいない気持ちと半分腹を立てつつ、そのエンサイらしき葉物を使うことにしました。包丁で切りはじめたのですが、これまた随分硬いのです。普通の葉物だったらザクザクと簡単に切れる筈なのに、これは一切れ切るにも大変で、上から体の重みを包丁にあずけてなんとか切れる始末です。どれほど冷蔵庫にほったらかしにされていたのかと腹を立てつつ、何とか小切りにしたのです。そして、出汁に葉物を入れてサッと煮てから味噌を溶いてみそ汁ができました。作っている途中でも、箸に葉物が当たる感覚と鍋から立ち昇る香りからして、ちょっとおかしな葉物だなあと思いつつ、最初のひと口を口にしました。口に入れた途端、苦味とエグミが口に広がりまったく飲める代物ではなかったのです。それでもエンサイがこんな風に変わってしまったのかと相変わらず思っていたのですが、そのうちに妻が帰ってきて妻へみそ汁の話をすると、何とも怪訝な顔で「それは桃の葉よ!!バカッ」と一喝・・・。
 何とも男(わたし)はバカな生き物だとおもいつつ、昔から桃の葉は「汗疹(あせも)に効く」と云われる所以(ゆえん)が口を通してわかったものです。
 苦味の陽性に対してエグミは陰性です。万物陰陽あわせ持ち、陽大なれば陰また大なりの如く、桃の葉は陰陽のエネルギーをともに多くもっているのだなーと口を通して本能に響いてきたのでした。
 これだけの力があるがゆえに汗疹(あせも)という排毒に充分対処しうるのだなあーとおもったのです。実際に陽性の排毒である背中の汗疹、陰性の排毒である胸側の汗疹、両方に桃の葉は効果があります。桃の葉は、特にこの時期の皮膚の痒みの排毒には特効を示します。桃の葉を水に入れて、沸騰したら15分くらい煮出します。その煮出した汁で汗疹や痒い患部を洗うのです。桃の葉がたくさん取れるようならば、沢山煮出して、風呂に入れたらいいでしょう。
 子どもはよく汗疹を作ります。子どもは血液が濃く、肝臓がまだ未熟で、血液をアルカリ化する能力がまだ未発達ですから、汗疹を作って、皮膚から老廃物を排出させているのです。汗疹だけではありません。皮膚疾患全般、大小便や汗で排出しきれない老廃物を肌の表面積を増やして、排毒させてくれているのです。かゆければその分、患部を?きむしりますから、そこから余計に排毒します。
 それと、皮膚疾患が現れる人の多くが、汗腺が未発達です。日本人であれば、全身の汗腺は250万ほどあるようです。それがアトピーの人は半分以下ほどしか働いていないといわれます。中には80万も汗腺が働いていない人もいるようです。汗腺の働きは3才くらいまでに大方決まるといわれるのですが、私の経験ではいくつになってからも発達させることはできます。体に合った日々の食養と手当て、運動を基本に、時に断食を取り入れることで、汗をかけなかった人も、しっかり汗をかけるようになります。
 10年ほど前に、突発性後天性全身性無汗症という病気の青年が来ました。全身の汗腺が働かなくなって、汗をかくことができなくなってしまったのです。汗をかけないわけですから、夏は体中が火照り、常に水を浴びていないといられません。その青年が体に合った食養と手当て、そして断食の実践で、3カ月ほどで汗がかけるようになったのです。当時はまだ難病指定されていませんでしたが、今では患者数が増えて、難病指定されている病気です。そんな病気であっても、陰陽の理を解して、食を変えれば治っていくのです。