あせもと難病

 10年以上前、東京に住んでいる頃です。家で一人でいるとき、みそ汁が急に食べたくなり、冷蔵庫で具材を探していました。そこにエンサイらしき葉物があったのですが、随分と水分が飛んで硬くなっていました。妻が冷蔵庫に入れっぱなしにしたなあ、と思い、もったいない気持ちと半分腹を立てつつ、そのエンサイらしき葉物を使うことにしました。包丁で切りはじめたのですが、これまた随分硬いのです。普通の葉物だったらザクザクと簡単に切れる筈なのに、これは一切れ切るにも大変で、上から体の重みを包丁にあずけてなんとか切れる始末です。どれほど冷蔵庫にほったらかしにされていたのかと腹を立てつつ、何とか小切りにしたのです。そして、出汁に葉物を入れてサッと煮てから味噌を溶いてみそ汁ができました。作っている途中でも、箸に葉物が当たる感覚と鍋から立ち昇る香りからして、ちょっとおかしな葉物だなあと思いつつ、最初のひと口を口にしました。口に入れた途端、苦味とエグミが口に広がりまったく飲める代物ではなかったのです。それでもエンサイがこんな風に変わってしまったのかと相変わらず思っていたのですが、そのうちに妻が帰ってきて妻へみそ汁の話をすると、何とも怪訝な顔で「それは桃の葉よ!!バカッ」と一喝・・・。
 何とも男(わたし)はバカな生き物だとおもいつつ、昔から桃の葉は「汗疹(あせも)に効く」と云われる所以(ゆえん)が口を通してわかったものです。
 苦味の陽性に対してエグミは陰性です。万物陰陽あわせ持ち、陽大なれば陰また大なりの如く、桃の葉は陰陽のエネルギーをともに多くもっているのだなーと口を通して本能に響いてきたのでした。
 これだけの力があるがゆえに汗疹(あせも)という排毒に充分対処しうるのだなあーとおもったのです。実際に陽性の排毒である背中の汗疹、陰性の排毒である胸側の汗疹、両方に桃の葉は効果があります。桃の葉は、特にこの時期の皮膚の痒みの排毒には特効を示します。桃の葉を水に入れて、沸騰したら15分くらい煮出します。その煮出した汁で汗疹や痒い患部を洗うのです。桃の葉がたくさん取れるようならば、沢山煮出して、風呂に入れたらいいでしょう。
 子どもはよく汗疹を作ります。子どもは血液が濃く、肝臓がまだ未熟で、血液をアルカリ化する能力がまだ未発達ですから、汗疹を作って、皮膚から老廃物を排出させているのです。汗疹だけではありません。皮膚疾患全般、大小便や汗で排出しきれない老廃物を肌の表面積を増やして、排毒させてくれているのです。かゆければその分、患部を?きむしりますから、そこから余計に排毒します。
 それと、皮膚疾患が現れる人の多くが、汗腺が未発達です。日本人であれば、全身の汗腺は250万ほどあるようです。それがアトピーの人は半分以下ほどしか働いていないといわれます。中には80万も汗腺が働いていない人もいるようです。汗腺の働きは3才くらいまでに大方決まるといわれるのですが、私の経験ではいくつになってからも発達させることはできます。体に合った日々の食養と手当て、運動を基本に、時に断食を取り入れることで、汗をかけなかった人も、しっかり汗をかけるようになります。
 10年ほど前に、突発性後天性全身性無汗症という病気の青年が来ました。全身の汗腺が働かなくなって、汗をかくことができなくなってしまったのです。汗をかけないわけですから、夏は体中が火照り、常に水を浴びていないといられません。その青年が体に合った食養と手当て、そして断食の実践で、3カ月ほどで汗がかけるようになったのです。当時はまだ難病指定されていませんでしたが、今では患者数が増えて、難病指定されている病気です。そんな病気であっても、陰陽の理を解して、食を変えれば治っていくのです。