素直な心は素食から

 「あなたは私のアイドルです」ベトナムのマクロビオティックの友人から突然言われて赤面した。4年前(2019)、ベトナムからマクロビオティックの講義の依頼があり、その時に知り合ったマクロビオティックの仲間の一人であった。新婚ほやほやの、まだ娘の雰囲気を残す若い女性からのひと言であった。
 ベトナムの人は素直な人達が多い。屈託ない笑顔の人達も多い。マクロビオティックの友人以外でも、私の地元にはベトナムからの出稼ぎの人達も多く、その人たちとも時々話すことがある。先日、子どもたちを川遊びに連れて行ったら、ベトナムの人たちも川で遊んでいて、少し会話をした。そこでも感じたのだが、日本人よりもベトナム人の方が笑顔がやわらかい。顔を触っているわけではないが、笑顔と表情からその柔らかさがよくわかる。
 食養指導は人の顔を観る仕事でもあるから、私は多くの人の顔を見てきた。顔からその人が食べてきたものがよくわかる。両親やご先祖が食べてきたものも顔からよくわかる。笑顔がやわらかい、ということは素食で育ってきたということ。肉食が多くなると表情が硬くなる。特に、環境(身土不二)に合わない肉食は、表情が硬くなるだけでなく、イボ、ホクロ、ニキビ、ソバカス、肌の凹凸など肌トラブルが頻発する。欧米人は肉食多いがよく笑うのは、肉食の害をオーバージェスチャーで消しているのだ。英語を話す時の方が日本語を話す時よりも表情筋をよく使うといわれるが、これも肉食の害を運動(会話)で消しているのだ。そう考えると、日本語の無表情の会話は、和食がいかに毒素を生まない素食であったということがよくわかる。
 ところが、現代の日本の食はずいぶんと複雑怪奇になってきた。スーパーに行ってみると数えきれないほどの食品が所狭しと並んでいる。ショッピングモールなどにあるフードコートにも世界中の料理店が並ぶところもある。この複雑怪奇な食品から私たち日本人が出来ているとしたら大変なことだ。食料自給率40%の日本は、私たちの体の半分以上は日本以外の食物から出来ているわけだ。
 一昔前の日本の歌謡曲は単刀直入の歌詞が多かった。「好きだ」「愛している」などストレートな表現が多かった。ところが今は、遠まわしで複雑な表現の歌詞の歌が多いような気がする。感性が豊かになってきているという言い方もできるが、感情が複雑になってきている面も多分にある。HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)という言葉がある。繊細かつ敏感で、神経過敏な面が強い人のことを指す言葉である。
 私たちの心も食物から来る。心身一如というように、心と体は表現方法が違うだけであって、その元は一緒である。
 素直な心はシンプルな食から生まれている。一方で、屈折して偏屈な心は、複雑怪奇な食から生まれている。多くの人の食養指導をしてきて心底そう思う。
 日本人はご飯とみそ汁と漬物で十分だと思う。日本人はこの素食を続けていれば、素直で素敵な生き方ができると思う。ベトナムの素直な彼女は、ベトナムの素食から造られているのだから。
 東南アジアの国々は、日本のよい所は学んだらいいが、近代的な食と生活は反面教師とした方がいい。世界の少子化のトップを行く韓国や日本の現代の食生活は、添加物まみれで身土不二から離れたものが普通になってしまった。
 マクロビオティックは日本の伝統的な食と生活を基本としている。日本の伝統的な食と生活こそ世界に誇る生き方である。素直であるかどうかは、運命が開けていくかカギになる。「笑う門には福来る」は「素直な心に福来る」であろう。