1984年ロスアンゼルス五輪、体操個人総合金メダルに輝いた具志堅幸司氏の逸話から。
具志堅幸司氏は、床(ゆか)の練習中にアキレス腱を断裂して、病院へ入院してしまった。入院前、具志堅氏は平行棒で下から上に回転する際、腕が真っ直ぐに伸ばすことができなく悩んでいた。しかし退院後、平行棒の練習をまったくしていないのに腕がまっすぐ伸びるようになったという。具志堅氏の体の中で一体何が起こったのか。
入院中、具志堅氏はひたすら平行棒で腕がまっすぐに伸びるとイメージしていたという。下から上へあがってきたとき、スムーズに腕がスーッと伸びるイメージをベッドの上で何度も何度も繰り返し想像していた。
脳には様々な物質があるといわれる。そのひとつがミラーニューロン(鏡のような神経細胞)。サルまねならぬ、ヒトまね。まねること、強くイメージすることによって実際に体が反応するという。ミラーニューロンは主に視覚から脳に働き、脳を活発化させるという。さらに、何度も繰り返し想像することによって、その実現性がより強くなる。「こうなりたい、こうなるんだ」「できるようになりたい、できるようになるんだ」「できるんだ、できた!」と持続的に想い続けることが大切だという。まさに心身一如。心と体が一体であるということをミラーニューロンを通して知ることができる。
このことは病気に対する心の持ち方へも大変に参考になる。
「病気は悪ではない、体の浄化反応としてあらわれているのが病である」という真理を持続的に想い続けること。これは大変な作用を体にもたらす。ミラーニューロンを橋渡しとして体の中の様々な遺伝子が働きだすのではないかと思う。
私自身、二十年以上前、大阪から東京へ向かう新幹線の中で突如強い頭痛に襲われた。何も飲食するものを持っていなかったので「まいったな」と思っていた。痛みはどんどん強くなり気持ちも悪くなってきた。あまりに強い頭痛に耐えきれなくなり、今まで飲んだことのある手当ての品を次々に想像してみた。大根湯、しいたけスープ、梅生番茶・・・というような感じで。そして「これだ」と感じたものを強く強く想像してみた。ちなみにそれはシイタケスープだったのだが、新幹線に乗っているあいだ中ズーっとシイタケスープを強く強く想い続けていた。
30分以上、シイタケスープを強く想って、飲んでおいしいイメージを頭の中で繰り返ししていた。そうしたらビックリ、頭痛はすっかりよくなって何だか気分がすっきり、とても爽快になってしまった。強く強く想い続けたことにより、シイタケスープを飲んで反応する遺伝子が、飲まずとも反応したのかもしれない。これも心身一如。そして何より大事なことは、心と身(からだ)をつなぐ真の生活ではないかと思う。