掃除と創造

 和道では毎月、食養合宿と称して半断食の合宿を行っている。全国各地から様々な人が参加される。参加者の中ではマクロビオティック実践者は半分くらいで、これからマクロビオティックを実践したい人、マクロビオティックのことをまったく知らなかった人が半分くらいいる。断食で検索したら和道が出てきて、参加してみてはじめてマクロビオティックを知ったという人もいる。
 マクロビオティックを断食を通して知る人は幸福であると思う。むろん、断食以外のご縁でマクロビオティックを知ることがわるいわけではない。しかし、断食は人生の大掃除であるから、掃除という人生でもっとも大事な行為を身につけるという点において、幸福であると思う。
 コロナが流行り出してからよりも、ワクチンを打ち出すようになってからの方が食養相談が増えている。統計的にも死亡者が増えているようだ。
 インフルエンザにしろ、コロナにしろ、感染症そのものが体内の大掃除であるのだから、それをワクチンで予防しようという発想そのものが不自然である。インフルエンザやコロナが流行ったら、自然生活をしながら、どんどん罹ったらいい。体の大掃除になって、自然に治せば、罹る前よりもずっと元気になる。
 コロナが流行り出したといわれて一年後くらいに、わが家の子どもたちがどこからともなくコロナらしき風邪を持ってきた。上の子たちは中高生であったので、外の食べ物もけっこう食べるようになっていた。そうしたら案の定、コロナらしき風邪にかかり、高熱を出して寝込んでしまった。しかし、まだ幼稚園児や小学生の下の子たちは、給食でなく食養弁当、さらに外食もないから、上の子たちの持ってきたコロナらしき風邪もなんのその、いたって元気に過ごしている。食養生活で体を大きく汚すことがなければ、感染症ほどの大掃除は必要ないのだろう。
 とはいえ、生きている限り人間は体だけでなく、いろんなものを汚しながら生きていく生き物なのかもしれない。だからこそ掃除をし続けないと生き長らえることができないような気がする。
 半断食の合宿を通して、日々の掃除がいかに大切か、ということを気づく人は多い。朝の掃除がいかに気持ちよいものか、ということを知る人も多い。朝の掃除の気持ちよさを知って、そこから朝の掃除が習慣化する人も多い。掃除ほど大切なものはないと日々その想いを強くする。私たちの体も、細胞レベルで常に掃除が行われているようだ。オートファジー(自食細胞)の研究でノーベル賞をとった大隅良典さんの研究では、オートファジーの機能を止めたマウスは、一日で細胞に毒素が溜まって、死んでしまったという。オートファジーこそ、細胞の掃除的働きも持つ細胞だけに、私たちの体は一日でも掃除ができなければ生きていくことができないのだ。
 世の中を見渡すと、社会にあまたある仕事は、掃除的働きが強いか、創造的働きが強いか、そのどちらでないかと思う。建設業や製造業など、ものづくりを担う仕事は、創造的働きの強い仕事である。一方、医療や福祉は掃除的働きの強い仕事ではないかと思う。社会もまた、私たちの体と同じように、掃除と創造が調和してこそ、よりよく回っていく。
 想像力が失われたり、新しいことにチャレンジできなくなったら、私は掃除をすることを心がけている。人生に行き詰まったら掃除をすればいいと思う。掃除こそ人生のリセットに最適である。掃除の中にこそ創造性が隠されている。5年ほど前に、不妊の改善で食養合宿に来た人は、トイレ掃除の気持ちよさに目覚めて、食養と断食の実践とともに、トイレ掃除の実践を日々休みなく行った。そうしたら一年後に、専門医から絶対無理といわれた自然妊娠に至って、元気な赤ちゃんを授かった。この人の行為はまさに、掃除の中から想像を実現させた好例である。掃除と創造は陰陽の関係であるから、常に相対的・相補的な関係の流れの中にある。
 迷ったら掃除、悩んだら掃除、生きづらさを感じたら掃除。掃除こそ運命を開く最大のものであると思う。

食後30分は水分とるな

 新年早々、能登では大地震にみまわれ、羽田では日航機と海保機の衝突事故。二日続けて大きなニュースが飛び込んできた。
 能登には20年来のマクロビオティックの友人がいて、昨日まで連絡が取れずに心休まらなかったが、やっと連絡がついて、家族みな無事だとわかった。ただ、家は全壊状態になってしまい、今は避難所で家族みなで肩を寄せ合っているという。
 他の友人からの情報では、世界各地でも新年早々にテロ事件が頻発しているともいう。一年の計は元旦にあり、といわれるが、令和6年(2024年)はなんと大変な年になるのではないかと多くの人がそう思わずにいられないのではないか。
 しかし、歴史を振り返ってみると、人類は幾多の厳しい状況を乗り越えてきた。先の大戦では、日本が戦闘地になり、多くの人達が犠牲になった。日本を含めて世界では、10年に一度の頻度で戦争があり、大きな自然災害はそれ以上の頻度である。それでも私たちの先祖は、危機的状況をくぐり抜け、たくましく生きてきた。記憶に新しい東日本大震災からも、私たちは立ち直り、力強く生きてきた。
 私は断食指導と食養指導がライフワークになっているけれど、人間は危機的状況に遭遇すると生命力が高まる生きものであることに疑いの余地がない。先の大戦で日本は完膚なきまでに叩きのめされても、這い上がり、人口は増えて経済は発展した。
 今年の干支は辰である。辰は登り龍である。登には屈まなければ大きく登ることはできない。能登で被災された皆さんも、今は屈む時期と考えて耐え忍んでほしい。きっと能登という地名のごとく、登り龍が復活するに違いない。
 WHOが沼田法として認めている「食後30分は水分を摂取しない」というだけで感染症は大幅に防ぐことができる。これは食養の大先輩、沼田勇先生が後世に伝えたことである。唾液は津液といって、体の隅々を潤す神秘の液体である。殺菌効果、ホルモン活性、免疫力向上、精神安定、様々な効能があるのも唾液である。その唾液は食事の時に「よく噛む」ことで 沢山出てくる。被災地ではなおさら、「よく噛む」ことが大事である。そして、よく噛み唾液を沢山出して、その唾液を薄めないために食後30分は水分を摂らない。これだけで大幅に感染症リスクが減る。先の大戦で陸軍の軍医であった沼田先生が、食養の食法を軍人に指導したところ、沼田先生が指導した軍は他の軍に比べて感染症に罹る率が大幅に少なかったという。
 他にも唾液を出すために、「よくしゃべる」「口周りをマッサージする」「よく動いて筋肉を活性化する」ことも大事である。足腰や手足の筋肉も、口周りの筋肉と連動し、繋がっている。
 ともあれ、私たちは危機感によって生命力が高まる。能登地震でも羽田の事故でも、危機に遭遇した人たちはものすごく生命力が高まっているはずである。ニュースを見聞きする私たちは恐怖に慄く必要はない。被災された人たちと共に「災い転じて福となす」行動をしたらいい。

 被災した友人に何か支援が出来ないかといろいろと情報収集しているのだけど、個別的に物資を届けることは難しいようです。東日本大震災の時には、「ポンセンキャラバン」と銘打って、多くの方々の募金を元に、東北に玄米ポンセンや玄米せんべいを何十トンと送ることができた。熊本地震の時には、自然食のレトルト食品を送らせてもらった。今回も能登版のポンセンキャラバンをしたいと考えています。その際は皆さんからのご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。