久しぶりに心躍る本を読んだ。「マクロビオティックで運が良くなる」とマクロビオティック実践者がよく言うけれど、その実際はなかなか公開されてきていなかった。それが、この本は赤裸々に全部を公開しているんじゃないかというくらい、「運が良くなるとはこういうことよ」という風に、軽やかに公開されている。
『中島デコのサスティナブルライフ』(パルコ出版)中島デコさんの生き方・あり方が満載である。デコさんそのものがマクロビオティックだと思う。絶対肯定感に溢れている。身におこること、降り注ぐこと、すべてを受け入れて、「行き当たりバッチリ」な生き方だと、自画自賛しているが、私も傍らから見ていて、本当にそうだと思う。デコさんは中島デコという名前をかぶっているけれど、もう他人と自分の隔てのない、まさに自他一体の生き方をしている。この本を読むと、デコさんはもう、みんなと一体であって、みんながデコさんのようである。読んでいるだけで爽やかになる。そんな本はなかなかない。
「あるもので暮らす」ということは、「あるものを生かす」という暮らし方。資源を生かし、野菜を生かし、環境を生かしていくように、私たちは自分も生かす暮らし方を選んで生きたい。とデコさん。
人は社会で生きていると、どうしても社会の方を見過ぎてしまう。目が外を見るようになっているから致し方ないのだけど、学歴だとか、肩書だとか、収入だとか、そんなどうでもいいようなことに目を奪われて生きてしまう。そんな社会にあって、デコさんは、命をそのまま、命として受け入れて、澄んだ目で生きてきたから、デコさんの子ども達もデコさんと同じように生きているのだと思う。デコさんは「ごはんは人生の中心だ」と言って、それをそのまま、実行している。なかなかできることじゃない。ミヒャエル・エンデの『モモ』を思いだした。デコさんは、時間泥棒から時間を取り返すモモのようだと思う。
桜沢先生は『食養人生読本』という本を書いているけれど、デコさんのこの本は女性版の食養人生読本じゃないかと思うくらい、デコさんの人生の味を味わうことができる。ここ何年か、春にデコさんに和道に来てもらって合宿をしているのだけど、昨年は「女・母・妻・仕事・人間としてのデコさん」と題してお話しをしてもらった。圧巻だった。「私は二回も旦那に逃げられているから、女として妻としては失格よ」と事もなげに話していたけれど、本の最後には、そこにまで至る葛藤が、やはり赤裸々に告白されていた。表紙の笑顔からは想像もつかない苦しみがそこにあったのだと。
どんなことがあっても人生はいいものだと思う。デコさんはそのものがマクロビオティックになったのは、その葛藤を含めて、人生丸ごとではないか。難があるから、「ありがとう」だと。
デコさんは子だくさんでもあったから、今では孫だくさんになって、これからのマクロビオティックな生き方をまだまだ模索している。そんなデコさんは、いつまでも「子どもを中心に据えた」生き方が人生の基本だという。いい子を育てることでなく、やんちゃでもわんぱくでも、元気溢れる子を育てることが大事だと思う。学歴より食歴である。マクロビオティックは、今の行き詰った社会の処方箋になると思ってきたけど、その実際の生き方がデコさんの生き方から学べる。珠玉の一冊が誕生した。