何を目指して生きていくか

 先日、サッカーの日本代表戦を見ようとしてTVをつけたら、なんとビックリ、子嶺麻さん(デコさんの長女)がTVに出ているではないか!それも、1時間近く、子嶺麻さんたち家族を特集している。ガス水道代ゼロ円生活、限りなく自給自足に近い生活をしている子嶺麻さん家族に密着取材だ。
 キッチンの主役は竈(かまど)になるのだが、その竈をなんと巧みに子嶺麻さんが使いこなしていることか!かまど調理が五感と脳をいかに活性化するかを、子嶺麻さんが笑顔満載で伝えていた。
 旦那さんの洋介さんも素敵な人だった。自給自足的な生活が本当の命を輝かせることを悟って、家族みなでその暮らしを楽しく送っている。ディレクターの「大変じゃないですか?」という質問に、子嶺麻さんが「そこが目指しているとこだから」という笑顔には感無量になった。
 人は目指すものがあってはじめて力が発揮できる。目的なく、ぶらぶら歩くのもいいものだけど、目指すものがあってそこに向かって歩くことは人生の醍醐味じゃないかと思う。私たちは何を目指して生きているのだろうか。以前のブログでデコさんを取り上げて「行き当たりバッチリ」と題して書いた。デコさんは自分の人生を「行き当たりバッチリ」と言うのは、デコさんは自分の目指すものが明確にあり、そこを目指して歩いていたからこそだと思う。目指すものがなければ、それこそ「行き当たりばったり」になっていたのではないだろうか。
 そんな子嶺麻さんを育んだデコさんは、いったいどんな子育てをしてきたんだろうと、何年か前にデコさんに聞いたことがあった。そうしたら、「子育って何?」とデコさん。デコさんは子どもを育てるという感覚ではなく、ただ「くらし」を一所懸命にしてきただけだったらしい。この「くらし」を大事に暮らして来たら、子嶺麻さん達はちゃんとデコさん達の背中を見ていたんだろうな。「くらし」を大事にするということは、次に命を繋いでいくもっとも大切なものだと思う。本当は、私たちのダレもが、未来永劫、次に命をつなぐことが目指すものなんだろうと思う。命というものの性質は次にバトンをつなぐことであるのだから。
 そんなデコさんと子嶺麻さん家族が、今年も和道にやってくる。TVやスマホやSNS情報などで知った気、やった気になるのではなく、実際のデコさん子嶺麻さんに会ってほしい。リアルな二人に会えば、きっと何かに火がつくと思う。自分の目指すものがはっきりしてくるかもしれない。

和道・スペシャル合宿&お話し会『中島デコのサステナブルライフ』出版おめでとうの集い&合宿 4月27~28日(土~日) 
詳しくは和道HPでhttps://www.m-wado.jp/   お話し会のオンライン参加(録画視聴もOK)もあります
申込みはメールでお願いしますmacrobiotic_wadou@yahoo.co.jp

花粉症の食養生

 先日まで半断食合宿を和道で行っていた。今回の合宿に参加した方のひとりが、「気がついたら花粉症が治っていた」という。その人は6年前に食養に出会い、ちょくちょく和道に来て体調管理をしている。日常は、東京でフツーのOLをしているので、付き合いやら誘惑やらで一般的な食事もしているのであるが、それでも「ほどほどの食養」を心がけ、年に何度か和道に来て半断食を習慣にしているお陰なのだろうか、着実に体と心が強くなってきている。6年前に出会った時は、体調不良のオンパレードで、春先になると花粉症に悩まされていた。それが、今ではこの時季になっても、鼻水も出ず、目も痒くならず、元気に過ごせている。
 先のコラムで花粉症は血液の酸性化ということを書いたが、血液の弱アルカリが恒常的になれば、花粉症からも卒業できる。
 もちろん、杉や檜に偏った日本の林業の見直しも大事なことである。杉や檜ばかりでなく、多種多様な落葉樹が生い茂る日本本来の里山が復活することが大切なことであると思う。そのうえで、私たちの食生活を見直し、体質改善をすることが国民病と化した花粉症からの警鐘ではないかと思う。
 花粉症の人たちを見ていると、あることに気づく。ごはん(おコメ)、みそ汁、漬物、お茶(できたら三年番茶)の習慣がないか薄い人に花粉症が多い。花粉症はアレルギーのひとつであるが、アレルギーのある人は、日本においては日本の伝統的な食習慣から離れていることがひじょうに多いのだ。
 身土不二、身体と環境(土)は切っても切り離せない。日本の風土に育まれた食物をベースに生きることが、日本人であれば血液を弱アルカリに保つことができる。さらに、日本の風土に合った腸内細菌が私たちの腸に棲みつく。
 自然に育った野菜を塩で揉んで、重しをして数時間置いておくと発酵が始まる。塩が空気中の有用菌を取り込んで、野菜に付着する菌との相乗効果で、私たちにとって必要不可欠な腸内の善玉菌を増やしてくれる。そういう点においても塩は私たちになくてはならない貴重な食物である。
 そして、日本人や東洋人の腸内細菌にとって最も大事なものがおコメである。おコメの食べる量が減ってくると、腸内の善玉菌も減ってくる。腸内細菌はおコメによって活性化してくる。糖質制限食は、ある種の断食になって、体の老廃物を排泄してくれるのであるが、長期間に及ぶ糖質制限は腸の善玉菌が減少して、腸が健全に働かなくなってしまう。動物食を多食する糖質制限はなおさら、悪玉菌を増やす動物性食品を食べ続けるわけであるから、腸内も血液も酸性に偏り、さまざまな弊害が出てくる。
 花粉症にも陰陽の症状がある。鼻水が水のように出てくるのは陰性である。鼻づまりは陽性。鼻水が水のように出てくるのと鼻づまりが共存するのは、陰陽両方。目の痒みは比較的陽性のことが多い。陰性が強い場合は、梅生番茶、みそ汁を一日2~3回摂ってみたらいい。喉が渇くようならば塩気の摂り過ぎだから、量は加減する。鼻づまり、目の痒みが強い陽性の方ならば、第一大根湯、しいたけスープ、野菜スープを美味しいだけ飲んだらいい。花粉症は、腸を良くするほか、肝臓と腎臓を活性化することも大事である。腹部や腰を生姜シップで温めたら、腸と肝臓と腎臓が活性化する。生姜シップが難しければ、こんにゃくシップや湯たんぽで温めるのでもいい。そして、体を温めるのに最も大事なことは運動である。よく動く人に花粉症はない。

花粉症と海の酸性化

 先日、ウォーキング合宿があり、参加の皆さんと一緒に群馬と長野の県境である碓氷峠を目指して歩いていた。ロッククライミングの聖地といわれる裏妙義を左手に見ながら、春の強風に向かって隊列を組んで歩いていた。裏妙義から碓氷峠に向かっても山が連なっているのであるが、その山は杉も多く、春の強風に吹かれて黄色の塊が東や南に移動していた。たぶん、いや間違いなく、黄色の塊は花粉である。山で生まれた花粉が、人が住まう平地に舞い降りるのだろう。花粉症のひどい人は、このコラムを読んでいるだけで鼻がムズムズしてくるかもしれない。少しの間、ご容赦いただき、最後まで付き合ってもらいたい。
 春の彼岸のこの時季、現代の日本でもっとも注意を要するのは花粉症だろう。「暑さ寒さも彼岸まで」というように、寒さが和らいでくるこの時季は、花粉が一気に拡散してくる。しかし、花粉症とはいえ、私たちは花粉だけに反応しているわけではなさそうだ。花粉と一緒にPM2.5などの微粒子の化学物質に体が反応している場合がひじょうに多いらしい。毛穴よりも小さい微粒子の化学物質が、皮膚から体に侵入して、皮膚トラブルを招いていることも少なくない。
 花粉症の症状は、実のところ、体の酸性化を改善しようとして起こっている自然な反応である。鼻水、目の痒み、皮膚の痒みなどは酸性に傾いた血液を排泄しているにすぎない。海もまた、酸性化しているといわれる。私たちの血液も海水も、本来は弱アルカリ性を保っている。ところが現代は、海も血液を酸性化してきている。
 酸性化の原因は、石油の使い過ぎである。現代社会は、衣食住だけでなく、道路、ガソリン、クスリに娯楽、ありとあらゆる暮らしの細部にまで石油で作られたもので満たされている。とはいえ、脱炭素を謳って原発を推奨する向きもあるが、原発から出る放射能や放射性廃棄物も強烈な酸性化物質である。現代の便利な生活を支えるエネルギーの多くが、私たちの体と私たちを取り巻く環境を酸性化させている。
 三年番茶、梅生番茶、梅干し、たくあん、浅漬け、とろろ昆布、わかめ。これらの食物は花粉症の症状に効く食養生である。これらの食物はみな、自然が生んだ植物である。人は植物から命をいただき生かされている。植物の多くは、私たちの体をアルカリ化してくれる。私たちの血液が弱アルカリであるというのは、長年、植物をベースに生きてきたことの証である。
 簡素な食と生活で私たちは十分生きていける。むしろ、簡素な食と生活でないと生きていけないのかもしれない。マクロビオティックな食と生活は、現代の革命である。マクロビオティックを自給自足、良妻賢母、一汁一菜に置き換えてもいい。花粉症が簡素な食と生活で改善することは、決して大冝な事でなく、革命の一歩である。「一日一個の梅干しはその日の難逃れ」などといわれた。花粉症で鼻水が止まらない人が、梅干しを1日1個いただき、種を何時間も舐めていたら、数日で鼻水が出なくなったという。梅干し習慣で花粉症改善した人も少なくない。 令和6年3月18日 記す