花粉症と海の酸性化

 先日、ウォーキング合宿があり、参加の皆さんと一緒に群馬と長野の県境である碓氷峠を目指して歩いていた。ロッククライミングの聖地といわれる裏妙義を左手に見ながら、春の強風に向かって隊列を組んで歩いていた。裏妙義から碓氷峠に向かっても山が連なっているのであるが、その山は杉も多く、春の強風に吹かれて黄色の塊が東や南に移動していた。たぶん、いや間違いなく、黄色の塊は花粉である。山で生まれた花粉が、人が住まう平地に舞い降りるのだろう。花粉症のひどい人は、このコラムを読んでいるだけで鼻がムズムズしてくるかもしれない。少しの間、ご容赦いただき、最後まで付き合ってもらいたい。
 春の彼岸のこの時季、現代の日本でもっとも注意を要するのは花粉症だろう。「暑さ寒さも彼岸まで」というように、寒さが和らいでくるこの時季は、花粉が一気に拡散してくる。しかし、花粉症とはいえ、私たちは花粉だけに反応しているわけではなさそうだ。花粉と一緒にPM2.5などの微粒子の化学物質に体が反応している場合がひじょうに多いらしい。毛穴よりも小さい微粒子の化学物質が、皮膚から体に侵入して、皮膚トラブルを招いていることも少なくない。
 花粉症の症状は、実のところ、体の酸性化を改善しようとして起こっている自然な反応である。鼻水、目の痒み、皮膚の痒みなどは酸性に傾いた血液を排泄しているにすぎない。海もまた、酸性化しているといわれる。私たちの血液も海水も、本来は弱アルカリ性を保っている。ところが現代は、海も血液を酸性化してきている。
 酸性化の原因は、石油の使い過ぎである。現代社会は、衣食住だけでなく、道路、ガソリン、クスリに娯楽、ありとあらゆる暮らしの細部にまで石油で作られたもので満たされている。とはいえ、脱炭素を謳って原発を推奨する向きもあるが、原発から出る放射能や放射性廃棄物も強烈な酸性化物質である。現代の便利な生活を支えるエネルギーの多くが、私たちの体と私たちを取り巻く環境を酸性化させている。
 三年番茶、梅生番茶、梅干し、たくあん、浅漬け、とろろ昆布、わかめ。これらの食物は花粉症の症状に効く食養生である。これらの食物はみな、自然が生んだ植物である。人は植物から命をいただき生かされている。植物の多くは、私たちの体をアルカリ化してくれる。私たちの血液が弱アルカリであるというのは、長年、植物をベースに生きてきたことの証である。
 簡素な食と生活で私たちは十分生きていける。むしろ、簡素な食と生活でないと生きていけないのかもしれない。マクロビオティックな食と生活は、現代の革命である。マクロビオティックを自給自足、良妻賢母、一汁一菜に置き換えてもいい。花粉症が簡素な食と生活で改善することは、決して大冝な事でなく、革命の一歩である。「一日一個の梅干しはその日の難逃れ」などといわれた。花粉症で鼻水が止まらない人が、梅干しを1日1個いただき、種を何時間も舐めていたら、数日で鼻水が出なくなったという。梅干し習慣で花粉症改善した人も少なくない。 令和6年3月18日 記す