体はもともと、骨が豊かと書いて「體(からだ)」であった。私たちの骨は体の基礎中の基礎であって、骨がしっかりしていないと日常の生活をおくることが難しい。
高齢化社会では、私たちの骨の問題も必然、多くなる。私のところにも骨粗しょう症の相談は多い。昨今では、骨粗しょう症から背骨を圧迫骨折し、一人での生活がままならなくなって和道に滞在して治療をする人も増えてきた。マクロビオティックを実践していても、骨粗しょう症になる人とならない人がいる。多くの人を観ていると、骨が豊かであり続けるためにはマクロビオティックの実践にもコツがあることがわかる。
これはマクロビオティックに限ったことではないのであるが、骨粗しょう症になる人に共通していることの大きなひとつに運動不足がある。骨は刺激すればするほど、強靭になる。縄文時代の人骨は多くの場合、現代人の骨に比べて倍以上太いものが珍しくないという。骨への負荷が現代人に比べて縄文人は倍以上あったということらしい。骨粗しょう症は車社会の産物の一つと言っても言い過ぎではないだろう。車は便利であるが、ほどほどの利用にしなくてはならない。車だけではない。運動不足は、現代生活を普通におくっていると、ダレでも陥るワナのようなものである。
先日、和道に滞在した圧迫骨折の人は、40年来食養を実践してきた60代の男性であった。彼の仕事はデスクワーク中心で、月に数回夜勤があったという。東京在住であったので車には乗らなかったようであるが、運動は通勤の徒歩くらい。家も職場も駅から離れていたので、それなりに歩いてはいたというが、縄文人や江戸人であったら家の前をほんの少し歩いた程度であっただろう。
夜勤や屋内のデスクワークというのは、日光不足にもなるので、骨代謝にはマイナスである。運動不足と日光不足は骨代謝だけでなく、自律神経も乱す。私も苦学生であった若い頃は、夜勤の仕事もしたことがあるが、食養生活での夜勤はひと工夫もふた工夫も必要であるのを実感した。本来は眠るはずの夜に起きて活動するというのは、陰陽で考えると相当陽性でなくては動けるものではない。夜行性の動物の多くが肉食(雑食も含めて)であるのを考えるとよくわかる。栄養学的には、夜の活動は私たちの体の中で脂溶性ビタミンであるビタミンA・D・Eなどをより消費するという。脂溶性ビタミンは水溶性ビタミンに比べて陽性である。夜という陰性な環境では、陽性な食物をいただかないと活動できるものではない。
現代社会の行き詰まりを考えると、健康革命を起こさなければならないと思う。圧迫骨折の彼の仕事は流通業であったのであるが、現代の物流を支える問題点が、こんなところにも出ているのである。ネットで注文したら次の日にモノが届く、という裏側には人間の健康問題が孕んでいることを肝に銘じなければならない。
運動不足と日光不足という条件が大前提にあると、いくら骨が豊かであった人でも、年月とともに少しずつ骨が脆くなってくる。そして、骨が弱くなってくる人たちに共通する食生活もある。その一つがコメ不足である。おコメのご飯が少ないのである。ご飯の代わりに麺やパンなどの小麦製品が多いのも特徴である。運動不足は消化力の低下を招き、結果、おコメを噛むよりも麺ややわらかいパンの方が食べるのがラクなのだ。その他では、味噌や漬物などの発酵食品不足。海藻や乾物などの食養食品の中では陽性な食品の不足もある。運動不足と日光不足は、腸の機能を低下させ、消化吸収力、免疫力、判断力などの力が奪われていくのを骨粗しょう症の人たちを観ていると感じるのである。