夢は体と心の素直な表現

 明るい昼間は視界が広いため、意識も行動も外へ外へと向かう。一方、夜の暗闇は様々なエネルギーが自分の内面へと向かう。明るい陽性な環境では陰性な外へ向かう力が優位となり、暗い陰性な環境では陽性な内へ向かう力が優位となる。これが自律神経の働きで、昼と夜、陰陽それぞれの働きが違う。
 夢もまた自らの内へ向かう大きな力・エネルギーのひとつではないかと思う。
 私たちの体は日々、タンパク質の入れ替えを行なっているといわれる。体重60kgの人で日に200~300gのタンパク質が入れ替わっているともいわれる。その計算だと1年も経たずに全身のタンパク質が入れ替わってしまう。理論上は300日で生まれ変わりも可能ということになる。しかし、この300日で細胞が入れ替わるという説はラットでのことである。小さな体の陽性なラットだから300日で細胞が入れ替わってしまったという理論を人間に当てはめた場合のことのようだ。実際、人間はネズミよりもずっと陰性で、代謝スピードも遅いので、すべての細胞が入れ替わるのにラット以上の時間がかかるだろうと想像できる。ラットの寿命は1~2年といわれるが、そのラットが約300日で細胞が入れ替わったということは、人間に当てはめたら人間は生きている間に1~2回くらいしか細胞が入れ替わらない、という計算もできてしまう。
 長年、食養指導をしてきて感じるのは、人間の場合は多くの細胞が入れ替えるのに10年以上はかかるのではないかと思っている。「10年一昔」といわれるように。
 そして、体の内部の変化は主に、夜起こっている。その内面の変化の一端が夢でわかる。人はさまざまな夢を見るが、その中でも過去のことを集中して夢に見るということがある。中学生時代のことが連続して夢に出てきたり、幼少時代のことばかり夢に見るなんてことがある。そんなときはその当時に作られた細胞がその夜に代謝している。
 過去の一時期のことを集中的に夢に見るという現象はめずらしいことではない。まして食養を実践していると体の変化は絶え間なく、新旧の細胞が常に交代するので、過去の食生活で作られた細胞が今の食生活で作られる細胞と入れ替わる。この入れ替わりの変化が激しいときに、かつ入れ替わる古い方の細胞が持つ情報が夢になって現れる。おもしろいことに、古い細胞が分解排毒され、その古い細胞が持っていた情報が夢に現れてから数日後に実際の体で排毒反応があらわれる。私自身も夢と排毒の体験をしたことがある。
 中学2年の夏、昼休みに友達と箒(ほうき)でチャンバラごっこをして遊んでいた。箒(ほうき)の掃く方を相手に向けてチャンバラをしていた。友達の振り下ろした箒の先が私の顔に当たろうとした。私はサッと後ろに身を反って顔はなんとか避けたのだが、首筋に箒の先がスーと走った。その瞬間、全身がゾクゾクとしたかとおもうと、体に発疹が現れた。首、ひじの内側、顔の順に広がり、アッという間に全身が赤いポツポツだらけとなった。顔などは形が変わるほどひどい状態となってしまった。痒みはそれほどではなかったのだが、見た目の悪さで恥ずかしくて学校に居られず、飛んで帰ったことを記憶している。
 時が経ち、食養をはじめ、ある時、中学時代の夢を連続してみる日が続いた。そして、夢を見るようになって1週間が過ぎようとした時、体に突然発疹が現れた。そう、あの時と同じような赤いポツポツ。驚いた。箒でチャンバラをして発疹が出てきたことも夢に出てきた。夢と体はつながっていると強く感じた。夢は体の素直な表現であったのだ。