素食文化にマクロビオティック

 正月早々、台湾に断食合宿と講演に行ってきた。この断食合宿と講演は、数年前からお付き合いのある日本語が流暢な台湾人の女性・法樺さんがコーディネートしてくれた。法樺さんは日本でマクロビオティックを学び、私の講座や断食合宿にもたびたび来てくれて、無双原理と食養を身につけていた。法樺さんはヨガの指導者としても有名で、台湾の新竹(しんちく)という都市でマクロビオティックのレストランとヨガスタジオを経営している。さらに、日本語、中国語、英語が堪能で、今回の断食や講演では完全に私の通訳に徹してくれた。八面六臂という言葉は彼女のためにあるのではないかと思うくらい、多方面で活躍している。
 そんな法樺さんのお陰で、素食文化が息づく台湾でマクロビオティックを普及することできた。素食とはある種の精進料理である。日本でも明治以前は肉食は禁忌だったから、日本も独自の菜食文化が発展していた。日本では禅宗(曹洞宗、臨済宗、黄檗宗)が精進料理を守ってきたが、台湾でも仏教や道教のお陰で菜食文化が今も根づいている。
 桜沢如一は西欧でマクロビオティックを禅の現代版として普及した。禅とは言葉のとおり、単純(シンプル)を示す。Simple is best(単純こそ尊い)。単純とは素直である。日本での素食は一汁一菜の簡素な食をいうが、台湾での素食は、より多くの人たちが満足する菜食のご馳走である。いわゆるもどき料理が発展している。肉、魚、卵、乳製品のもどき料理は、ホンモノそっくりでビックリする。さらに、台湾は日本よりも添加物の規制が厳しいから、台湾で有名な夜市(よるいち)でも楽しめる素食があるから素晴らしい。日本のお祭りなどで並ぶ露店では考えられない。
 台湾の菜食人口は10%以上という。これはインドの菜食人口30%に次いで多い。台湾の人口は約2300万人だから、300万人位の人たちが菜食ということになる。インドは熱帯地域、台湾は熱帯~亜熱帯地域に属する。このような温かい、暑い地域では菜食がベストである。
 台湾でのマクロビオティックの歴史は詳しく調べていないのでまだはっきりしないが、以前に田中愛子先生から、台湾でマクロビオティックを教えたことがあると聞いた覚えがある。それでも、ここ数十年はマクロビオティックの普及はなく、今回のイベントは画期的なことだったのではないかと思う。断食合宿や講演会にそれぞれ30人以上の台湾人が参加してくれた。多くの人が、日々の食や生活で実用的に応用できる陰陽を、マクロビオティックを通して知ることとなった。「自分の病気は自分で治す」という自然界では当たり前のことに、台湾の皆さんも日本の人たちと同じように驚いていた。
 マクロビオティックは身土不二、一物全体、陰陽調和を基本としているが、これは地球を一つの生命体として見た時に、当たり前の現象を言っているに過ぎない。マクロビオティックの原理原則は、地球上、ドコでもダレでも、イツでも実践できる、ホントに簡素な食と生活法である。この禅的な生き方を陰と陽という考え方に乗せて普及したのが桜沢如一である。そして、この生き方を追求していく先に世界平和がある。台湾でもそのことを何度もみんなに語り掛けた。平和な社会は私たちの一口から始まる。
 台湾では今年、正食食養協会が発足する。台湾でマクロビオティックが盛り上がることは、日本人を大いに刺激する。台湾だけでなく、南米でも東南アジアでも、そしてヨーロッパでもマクロビオティックは息づいている。桜沢如一の蒔いた種は、着実に根を張り、実っている。「素直な心は素食から」を忘れずに、日本も台湾も、そして世界でもマクロビオティックの普及に精進したい。